2026年7月8日にリリースされた VS Code 1.128 で、Claude のエージェントセッションを 複数チャットで並列に走らせる 機能が入りました。これが想像以上に効きます。
私は先週、Astro 7.0 のブログサイト移行で3つのアプローチ(SSR/SSG/ISR)を同時に検証したのですが、以前なら1本ずつ試して2日かかっていた比較検討が半日で終わりました。ターミナル版の Claude Code とは別レイヤーで、エディタ内の並列思考を支える機能として組み合わせるのがコツです。
この記事では、multi-chat と fork の基本操作、実務で回すワークフロー3つ、そして落とし穴までまとめます。
結論:VS Code 1.128 の Claude multi-chat は「分岐と並列」の2軸で使う
先に結論を言います。VS Code 1.128 の新機能は、単なる「チャットが増えた」ではありません。
公式アナウンスによれば、1つのセッション内に関連する複数のチャットを持ち、アプローチを比較したり、過去のターンから分岐したり、並列で作業を走らせたり できる設計です。ポイントは次の3つ。
- チャットを追加してセッション内に並列に配置できる
- 既存ターンから fork(分岐) して別の方向性を試せる
- ピアチャット間を切り替えつつ、同時にターンを送信 できる
つまり Git のブランチと似た感覚で「AI の思考を分岐させる」ワークスペースが手に入ったわけです。
なぜ multi-chat が刺さるのか:シングルチャットの限界
従来のシングルチャット運用で、あなたも一度はこう感じたことがあるはずです。「今の会話の途中から別案を試したいけど、履歴を汚したくない」。
私の場合、リファクタリング中に「型の設計を2パターン比べたい」と思っても、同じチャットで質問すると先の文脈に引っ張られ、結局どっちがどっちの提案だったか混ざる。かといって新規チャットを開くと、そこまで積み上げた前提を全部貼り直すハメになります。
fork はこの摩擦を解消します。任意のターンからチャットを複製 できるので、そこまでの文脈は共有しつつ、以降の探索だけ分けられる。地図で言えば、分岐点にピンを打ってそこから別ルートを試す感覚に近いです。
セットアップと基本操作:5分で並列運用に入る
VS Code 1.128 以降であれば、追加インストールなしで使えます。手順はシンプル。
1. VS Code を 1.128 以降に更新する
Help > Check for Updates で 1.128 以降を確認。私の環境(macOS)では自動更新後、Chat ビューに「+ New chat」の隣に チャットタブ が並ぶ UI が出ました。
2. モデルを Claude に固定
チャット右下のモデルセレクタから Claude(Sonnet 4.6 または Opus 4.7 系)を選びます。並列運用ではモデルを混ぜないほうが安定します。理由は後述しますが、プロンプトキャッシュの前提が崩れるからです。
3. 分岐したい位置で fork
過去のターンにカーソルを合わせると「Fork from here」相当のアクションが出ます。ここから派生チャットが生まれ、以降の会話は独立します。
4. 並列送信
複数チャットを開いた状態で、それぞれのプロンプト入力欄に指示を投げると、同時にエージェントが走ります。私が試した限り、3並列くらいまでは体感でも快適でした。
実務で効く3つのワークフロー
並列チャットは「なんとなく便利」で終わらせず、型化して使うと効果が跳ねます。私が回している3つを紹介します。
ワークフロー1:実装案の A/B/C 比較
新機能の設計判断に迷ったとき、共通の要件定義まで書いたところで fork。それぞれのチャットに「A案:サーバーコンポーネント寄り」「B案:クライアント側で完結」「C案:エッジで処理」など方針だけ変えて投げます。
30分後に3つの実装草案が並び、それぞれのメリット・落とし穴が見える。これは判断のスピードが上がりました。
ワークフロー2:失敗ブランチの隔離検証
本流のチャットで「これはたぶんダメだけど念のため試したい」案を検証したいとき、fork して隔離。ダメだったらそのチャットタブを閉じるだけ。本流の履歴とキャッシュを汚しません。
実装で言うと、依存ライブラリのメジャーバージョン上げみたいな「賭け」を本流に混ぜずに済むのが大きい。
ワークフロー3:並列レビュー
1つ目のチャットで実装、2つ目でセキュリティ観点のレビュー、3つ目でパフォーマンス観点のレビューを同時進行。同じコードを別視点で見せて、指摘が重なった箇所だけ優先的に直す運用です。
レビュー観点をあらかじめ CLAUDE.md や .github/instructions に固定しておくと、毎回同じ質で回せます。
プロンプトキャッシュとの相性:並列でも90%削減を維持する
並列運用で見落としがちなのが、プロンプトキャッシュの効き方 です。
公式ドキュメントによると、Claude のプロンプトキャッシュはプレフィックスをバイト単位で完全一致させることでヒットします。fork で分岐した直後は、分岐点までのプレフィックスが共有されている ため、両チャットともキャッシュが効きます。
ただし注意点が3つあります。
1つ目、モデルを途中で切り替えるとキャッシュは無効化されます。並列チャットごとにモデルを混ぜたくなる気持ちを抑えて、まずは同一モデルで揃えるのが安全。
2つ目、ツール定義の順序が変わるとその後のプレフィックスも壊れます。MCP サーバーを片方だけ追加、みたいな運用は避けたほうが無難です。
3つ目、2026年2月5日以降、Claude API のキャッシュは ワークスペース単位で分離 されています。つまり複数ワークスペースを跨いで同じプロンプトを投げても、キャッシュは共有されません。VS Code の Workspace を分けて使っているあなたは、ここでキャッシュヒット率が想定より低く出る可能性があります。
落とし穴3つ:並列運用で私が踏んだ地雷
実運用で気づいた注意点をまとめます。
落とし穴1: トークン消費が単純に n 倍になる
当たり前ですが、3並列で走らせれば3チャット分のトークンが飛びます。fork で共通プレフィックスがキャッシュされていても、以降の分岐部分はフルで課金対象。「便利だから」と5並列で回した週、月末の請求書で軽く反省しました。目安として、並列数は3までに絞る運用が現実的でした。
落とし穴2: fork 元を消すと分岐先の文脈が読みにくくなる
UI 上は独立して見えても、意味的には分岐点の議論が前提になっています。fork 元を削除する前に、重要な決定事項は各分岐チャットの冒頭に転記しておくと後で救われます。
落とし穴3: /clear は使い方に注意
並列チャットのうち1つで /clear 相当の操作をすると、そのチャットのキャッシュは丸ごと再構築になります。5分の TTL を意識して、休憩前後のワークフローは組み直しが必要です。
Claude Code(ターミナル版)との使い分け
よく聞かれるのが「ターミナル版の Claude Code と VS Code 内 Chat、どっちを使うのか」。
私の答えは 役割で分ける です。
ターミナル版の Claude Code は、.claude/agents によるサブエージェント、Hooks、MCP といった 重厚な自動化 に強い。一方 VS Code 1.128 の multi-chat は、エディタで開いているファイル context を活かした瞬発力ある試行錯誤 に向きます。
私は「設計判断・比較検討は VS Code multi-chat」「大規模リファクタや長時間の自動タスクはターミナル Claude Code + subagent」で分けています。両方を1日の中で使い分けるのが、2026年時点で一番効率の良い開発スタイルだと感じています。
まとめ:今日から始める3つのアクション
ここまで読んだあなたが今日試せるアクションはこれです。
- VS Code を 1.128 以降に更新 し、Chat ビューに複数タブが並ぶことを確認する
- 今抱えている実装判断を1つ選び、要件定義まで書いた段階で fork して A/B 2案を並列に走らせる
- モデルは Sonnet 4.6 か Opus 4.7 系に固定し、並列は3チャットまで に絞ってトークン消費をコントロールする
並列チャットは、慣れないうちは「開きすぎて集中が切れる」問題も起きます。私も最初の週は5つ開いて頭が回らなくなりました。数を絞り、fork のタイミングを設計に落とし込むほど、この機能は効いてきます。
次に読むなら、キャッシュ設計を深掘りした過去記事「Claude APIコスト最適化2026」と、subagent 設計をまとめた「Claude Code サブエージェント実践設計2026」を合わせて読むと、並列運用の全体像がつかめます。
参考リンク
- Visual Studio Magazine — Claude AI Gets Yet Another Boost in VS Code 1.128 — VS Code 1.128 multi-chat / fork の発表概要
- Claude Platform Docs — Prompt caching — キャッシュのワークスペース分離仕様
- Releasebot — Claude Code Updates (July 2026) — subagent やバックグラウンドセッションの最新変更点